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大阪高等裁判所 昭和35年(く)13号 決定 1960年3月31日

少年 S(昭一六・八・二生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣旨は原決定を取り消し、少年を在宅保護処分に付せられたいというのであつて、その理由の要旨は原裁判所が本件保護事件について少年を試験観察に付していた際、抗告人Hは少年の将来を慮つて適切な保護措置を受けるため、原裁判所に対して少年の家庭における行状を報告したのであるが、そのことについて少年は抗告人の真意を理解しようとせず、逆に無慈悲な処置をされたと考えて抗告人を怨み、反抗的態度をとるようになつたと察せられるばかりでなく、元来少年はその性格が異常であるから、特別少年院に送致されて一般少年と共同生活をすることになると、更に性格が悪化する虞があるから、今一度家庭に引取り、抗告人らが父母の愛情によつて保護善導をいたしたく、本件抗告に及んだというのである。

よつて、本件記録及び取寄せにかかる少年調査記録を調査し、少年の生活経歴、非行歴、学歴、知能、性格、家庭、環境等から本件非行の原因、程度、態様及び試験観察中の少年の行状、抗告人らの保護監督能力等を見ると、少年の要保護性及び犯罪的傾向はかなり進んだものであつて、少年の健全な育成を期するためには、この際特別少年院における収容保護によらねばならぬ段階に達しているものと認められる。所論は少年が抗告人の前記措置を曲解して反抗的態度に出るようになつたと察せられるから、今一度父母の愛情によつて保護善導したいから在宅保護に付せられたいというが、少年は昭和三十三年五月十五日医療少年院送致の決定を受け、翌三十四年九月三十日仮退院をしたが、その後僅々一箇月目の同年十月二十九日再び本件窃盗事件を犯すに至つたのである上、原裁判所が抗告人ら及び少年の希望を斟酌して同年十一月二十六日少年を抗告人らの手に委ね、試験観察に付したところ、少年はその後も勤労を嫌い、生活態度も恣意的で二回に亘り家出し、抗告人らの正当な指導監督にも従わず、観察期間中の成績が極めて不良で、在宅保護によつては到底その目的を達し得ないことが明らかである。その他所論の点を検討しても、原決定の保護処分が著しく不当であるとは認められない。本件抗告は理由がない。

よつて、少年法第三十三条第一項、少年審判規則第五十条に従つて主文のとおり決定する。

(裁判長判事 奥戸新三 判事 石合茂四郎 判事 青木英五郎)

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